神さまはボクに試練を与えてくださってるんだ。

これを乗り越えたらボクはきっと幸せになれるんだよ。

きっと誰より幸せになれるんだ。

 

だからボクは毎日辛抱しているよ。最初は怖くてたまらなかった。

白い服の人間たち(ボクをまるでそこらのぬいぐるみみたいに扱うんだよ!)のことだって、もう慣れちゃった。

だけど今でも、おりから出されて、怖い部屋に連れて行かれて、痛いことをされるんだって思うと、

ボクはぎゅっと固まっちゃうんだ。

 

だけどね、きっと神さまはこれを乗り越えた僕に一番の幸せをくれると思うから、

ボクはどれだけでも辛抱できるよ。

もしかしたら、あの白い服を着た人間が神さまなのかもしれないね。

ボクがどれだけがまん強くて幸せになるのに適した犬か試してるんだ。

だからボクはがまんするよ。

白い服の人間に足を折られたって、背中を切られたって、歩けなくさせられたって。

 

まわりには幸せになれる候補の犬が他にもいるけど、みんな僕ほどがまん強くはないんだ。

試練にたえきれなくて死んじゃった犬もいる。

でも、ボクは負けないぞ!

 

白い人間たちはボクらのことを「ジッケンドウブツ」なんて呼んで、

食べるものもろくにくれないし(ボクはまだ食べ盛りの子供だぞ!)、痛いところだってほったらかし。

知ってる? 傷を放っておくとそこからうねうねした虫が生まれるんだ。

おかげで痒くて痛くて仕方ないよ。

ところで、「ジッケンドウブツ」ってどういう意味なんだろう?
 
幸せになれる犬のことかな?
 
そうしたら、ボクは一番の、とびっきりの「ジッケンドウブツ」になってやる!

 

それにしても、ボクはもうずっとここで神様の試練にたえてるのに、ちっとも幸せはやってこない。

それどころか、どんどん不幸になっているみたいだよ。

もしかしたらボクはこのまま死んじゃうかもしれない……怖いよ、痛いよ。誰か助けてよー…。

ううん、弱気になったらだめだ。

きっともうすこし。もうすこしの辛抱だよね。

 

そう思ってがんばっていたら、やっとボクに幸せがやってきたんだ! 

ボクが冷たくてくらいおりの中で眠っていたら、きらきらひかる幸せそうなものが僕のところに来たんだよ。

それでね、ボクに向かってにこっと笑ってくれたんだ。

ボクの心の中がすっごく幸せな気持ちでいっぱいになったんだよ。

きらきらひかる幸せそうなものが、ボクを明るい光で包んだら、

ボクの体中の傷や痛いところが全部治っちゃったんだよ!

ボクはやっと幸せになれるんだ! 誰よりも幸せになれるんだ!!

 

作者 水姫マリィさん


このお話はQBOOKSさん主催の第20回中高生1000字小説バトルに出品された当時高校3年だった水姫マリィさん
の作品です。 今回この作品の転載にあたり、作者の水姫マリィさんは、快諾して頂けただけでなく、このページのために、わざわざ新たに書き直してくれました。本当にありがとうございます。このお話が多くの人に読み継がれていき、かわいそうな動物たちが少しでも減ればいいなと思います。